ダミアン・ハースト
Damien Hirst
ダミアン・ハーストは1965年イギリス・ブリストル生まれ。サメを巨大な水槽でホルマリン漬けにした作品《生者の心における死の物理的不可能性》(1991)をはじめ、死のなかに生を感じさせる作品で知られる。86年、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ美術学部に入学。在学中の88年、テムズ川沿いの空きビルで仲間らと自主企画展「フリーズ」を主催する。90年に動物の死骸を用いた最初の作品《一千年》を制作。穴の空いたガラス板でガラスケースの空間を仕切り、片方にウジ虫を培養する箱を、もう片方には牛の頭部と殺虫灯を置き、ウジ虫が羽化して死骸となるまでの生命の循環を表現した。
92年にロンドンのサーチ・ギャラリー(ロンドン)で《生者の心における死の物理的不可能性》を発表。ターナー賞に初ノミネートされ、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)のひとりとして注目を集める。その後も、牛の親子の体を断面化した《母と子、引き裂かれて》(1993)や、自身が影響を受けるフランシス・ベーコンのトリプティックを引用した《孤独の静寂》(2006)など、ホルマリン漬けの作品を制作する。95年にターナー賞を受賞し、03年にサーチ・ギャラリーで初回顧展を開催。また、97年にスタジオを「Science Ltd.」として株式会社化し、錠剤をモチーフとしたドットの絵画シリーズを量産・販売するほか、出版事業やレストラン経営などビジネスの領域でも成功。07年、『Art Review』によるアート界有力者番付1位に選ばれる。同年、死の象徴である頭蓋骨に、生を示すダイヤモンド8601個をあしらった《神の愛のために》(2007)が当時120億円で落札される。
12年にテート・モダン(ロンドン)で大回顧展を開催。17年の大規模個展「Treasures from the Wreck of the Unbelievable」(パラッツォ・グラッシ、ヴェネチア)では、東アフリカの海底に沈んだ架空の難破船「アンビリーバブル号」から発掘した宝物を展示するという壮大なコンセプトが話題を呼んだ。最近では、蝶を使った絵画シリーズ「Kaleidoscope Paintings」(2001〜)などを発表している。