歩みを止めないために。花に託した幸せの定義
連載「花とその先にある言葉」、第1弾は奥田雄太。花に託された想いを表す「花言葉」から着想を得て、本特集では花をモチーフにした作品と言葉が響き合う、特別な体験をお届けします。作品を通して交わされた言葉と作品から見えてきた思いを「花言葉」として紡ぎ、花を贈るように連載として展開。感性の蕾がほころぶ瞬間をどうぞお楽しみください。今回は、「OIL」での特集は2度目の登場となる奥田の現在地について迫ります。
文・構成=髙内絵理 撮影=阿部美月(ともにOIL)

奥田雄太を制作に駆り立てる動機は、非常にシンプルです。それは、当たり前のことへの感謝をテーマに作品を描くということ。そして現在に至るまで、一貫して花をモチーフに描き続けています。
奥田は、コロナ禍をきっかけに花を描くようになりました。当時、自身だけでなく、周囲の人々もどこか元気を失っているように感じるなか、それまでモノクロの作品を多く発表していた奥田は、「作品を見た人に少しでも前向きな気持ちになってほしい」、そして「自分自身も前向きになりたい」と考えるようになります。そして、自分が描くべきものは、より直感的に伝わりやすく、自身にとっても馴染みのあるモチーフが良いと考え、花を選びます。なぜなら、花は、感謝や祝福の気持ちを伝える際に贈られる身近な存在であると同時に、豊かな色彩により人の気持ちを明るくする力を持っていると感じているためです。作品を日々目にするなかで、自分が伝えたい「感謝」というテーマについて考えてもらうきっかけになれば、という思いも込められています。また、奥田の描く花は、特定の品種を写実的に描いたものではありません。花言葉のように特定の意味やイメージに限定されることを避け、鑑賞者に想像の余白を残すため、特定の花を想起させない抽象的な表現として描かれています。
奥田は、感謝をテーマに制作を続けていくための、「過去でも未来でもなく、『いまここ』で起きる様々な事象について感謝できる」心と身体の状態についても考えます。画家としての活動と、1人の人間としての人生は切り離されたものではなく、どちらも尊重されるべきもの。すべてのことは地続きに存在しています。夢と現実とのあいだで葛藤しながら必死に制作を続けてきた時間、ライフステージや環境の変化、制作スタジオの拡大、そして多くの人と関わりながら様々なプロジェクトを進行する現在。その歩みのなかで、人との関係や周囲に対する意識も作品とともに変化し続けています。
感謝を伝えることが「幸せを分かちあうコミュニケーション」であるならば、そこには必ず相手の存在があります。「自分だけでなく、相手や周囲の人々も充足感を感じられる状態こそが本質的な幸せなのではないか」と考える奥田にとって、制作や日々の行動もまた、「感謝」というテーマと切り離せないものになっています。
「自分の作品を通して、いま目の前にあるものは決して当たり前ではないことを、少しでも意識するきっかけを生み出したい」。人の意識や行動を変える可能性を持つ「絵画」を信じて奥田は、表現を追求し続けています。
《Abstract Bouquet 260802 (Pearl White × Deep Gold)》(2026)
《Abstract Bouquet 260802 (Pearl White x Deep Gold)》のみ、9月16日より30日までOIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷PARCO2階)にて展示。オンラインとともに、実際に鑑賞もぜひお楽しみください。
《Abstract Single Flower 260328 (Aurora × Gold)》(2026)
《Abstract Single Flower 240720 (Dark Gray Gradation × Purple)》(2024)
《Trimmed Bouquet 240426 (Pink × Turquoise Blue)》(2024)
プロフィール
奥田雄太

1987年愛知県犬山市生まれ、神奈川県在住。コロナをきっかけに日々の当たり前だと思っていたことが、じつは特別な出来事だったと気付き、その当たり前に感謝し、その思いを作品にしたいという思いから「with gratitude」というテーマで鑑賞者に感謝を伝える「花」を描いている。絵具の混ざった偶発的な部分を、極細のペンでアウトライン化していくことで「偶然」を「必然」に変えていくような描き方をしている。現在は、個展やアートフェアなど国内外問わず精力的に作品を発表し続けている。
第2弾予告
第2弾は村上生太郎。12月上旬公開予定。
Information
《Abstract Bouquet 260802 (Pearl White x Deep Gold)》のみ、9月16日より30日までOIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷PARCO2階)にて展示。
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会期|2026年9月16日(水)~2026年9月30日(水) |




