ものごとがとけていく様は美しい。

それは、丸みを帯び、まとまり流れゆく姿に甘美な未来を感じるからなのか、崩れていく過去に時の経過の緊張感と儚さを思うからなのか。

融解という現象は、物質の世界だけではなく、人間社会、さらにはわれわれの身近なところでも絶えず起こっている。その様子は流動的であり、理解しているようでいて、あいまいでつかみどころがない。

この作品は、物質と熱のコントロールによって、融けていく過程の瞬間を切り取った。 流れゆく状況のなかで見過ごしがちな姿を、少し立ち止まって見つめてみる。一つの出来事のなかで起こる、新しいかたちと失われるかたち。一度とけたものは元には戻らない。

ー白矢幸司